ラーニングアナリティクスとは?意味と導入メリット・事例解説
この記事のポイント
ラーニングアナリティクスとは、学習者の解答や学習時間などの学習ログを収集・分析し、指導や研修の改善に役立てる取り組みです。LMSはデータの蓄積基盤、アダプティブラーニングは分析結果を個別最適化に活かす仕組みという役割の違いがあります。
「ラーニングアナリティクスという言葉の意味やLMS・xAPIとの違いがわからず、勘や経験に頼った指導からデータ活用型の教育に変えたいと考えている」
こうした疑問に答えます。
本記事の内容
- ラーニングアナリティクスの意味と関連用語との違い
- 導入するメリット
- 活用事例と代表的なツール
ラーニングアナリティクスとは、学習ログをデータとして収集・分析し、学習状況を可視化して指導や研修に役立てる取り組みです。
仕組みや導入するメリットを理解すれば、教育現場や企業研修にデータ活用の視点を取り入れやすくなります。最後まで読み進め、自社の教育戦略を見直す材料に役立ててください。
ラーニングアナリティクスとは
ラーニングアナリティクスとは、エドテック分野において、学習者の解答履歴や学習時間などの学習ログを収集し、可視化・分析することで学習状況の把握や指導改善に役立てる取り組みです。教育ビッグデータを活用し、勘や経験に頼らないデータドリブンな教育を目指す考え方といえます。
意味と定義
ラーニングアナリティクスは、日本語で「学習分析」と訳されます。学習者の正誤情報や学習時間、教材の閲覧履歴といった行動データを収集し、学習の評価や成績との関係性、つまずきやすい箇所などを明らかにする手法です。
従来の学習分析はアンケートやテストの結果を中心に行われてきました。これに対しラーニングアナリティクスは、学習に至るまでのプロセスそのものをデータとして捉える点が異なります。九州大学の研究グループなどが早くから研究を進め、教育現場や企業研修への応用が広がっています。
注目される背景
ラーニングアナリティクスが注目される背景には、GIGAスクール構想によるデジタル端末の整備や、企業研修におけるDX推進があります。学習者一人ひとりのデータが蓄積しやすくなったことで、指導や研修設計を客観的な根拠に基づいて見直す動きが強まりました。
大学における研究の蓄積も普及を後押ししてきました。九州大学は早くからラーニングアナリティクスの研究拠点を設け、教育データの一元管理と分析研究を進めてきた実績があります。研究段階にとどまらず、他大学との共同トライアルなど運営の実務に組み込まれつつある点が、直近の大きな変化です(詳しくは後述の活用事例で解説します)。
xAPIとLRSとの関係
ラーニングアナリティクスを支えるデータ環境として、xAPIとLRSという2つの技術が使われます。それぞれの役割は次のとおりです。
| 用語 | 役割 |
|---|---|
| ラーニングアナリティクス | 学習データを収集・分析し教育改善に役立てる取り組み全体 |
| xAPI | 学習経験を記録するためのデータ形式の標準規格 |
| LRS | xAPI形式の学習履歴を蓄積するデータベース |
さまざまな教材やシステムから出力された学習ログは、xAPIという共通形式に変換されたうえでLRSに蓄積されます。この仕組みにより、複数のシステムをまたいだ学習行動を横断的に分析できるようになります。
ラーニングアナリティクスとLMS・アダプティブラーニングとの違い
ラーニングアナリティクスは、LMSやアダプティブラーニング、教育ビッグデータといった関連語と混同されやすい言葉です。それぞれの役割の違いを整理しておきましょう。
LMSとの違い
LMSは、教材の配信や受講登録、進捗管理といった学習運営の基盤となるシステムです。学習履歴を蓄積する機能を備えていますが、その主な目的は学習コンテンツの配信と管理にあります。
一方でラーニングアナリティクスは、蓄積されたデータを分析し、学習効果の改善につなげる取り組みそのものを指します。LMSにデータを溜め込みすぎると動作が不安定になる恐れがあるため、LMSとは別にLRSを用意し、負荷を抑えながら分析環境を構築する方法が一般的です。
| 項目 | LMS | ラーニングアナリティクス |
|---|---|---|
| 主な役割 | 教材配信・受講管理・進捗管理 | 学習データの収集と分析 |
| 目的 | 学習運営の効率化 | 学習効果の改善と可視化 |
| データの扱い | 蓄積が中心 | 分析・活用が中心 |
両者は対立する概念ではなく、LMSが生み出すデータを土台にラーニングアナリティクスが機能するという補完関係にあります。
アダプティブラーニングとの違い
アダプティブラーニングは、AI教育の一環として、学習者の理解度に応じて教材や問題の難易度をAIが自動で調整する学習手法です。ラーニングアナリティクスで得られた分析結果を、学習者ごとの最適化に直接反映させる技術といえます。
つまりラーニングアナリティクスは学習データを収集・分析する取り組みであり、アダプティブラーニングはその分析結果を活用して個別最適な学びを提供する仕組みです。ネットワークを通じて個別最適化学習を提供できる点は共通していますが、担っている役割は異なります。
教育ビッグデータとの関係
教育ビッグデータとは、学習者の学習履歴や行動ログなど、分析の対象となるデータそのものを指す言葉です。解答の正誤、学習時間、教材の閲覧回数など、さまざまな種類のデータが含まれます。
ラーニングアナリティクスは、この教育ビッグデータを収集し、可視化・分析する取り組みにあたります。データそのものを指す教育ビッグデータと、それを活用する取り組みであるラーニングアナリティクスを区別して理解しておくと、関連する用語の位置づけが整理しやすくなります。
ラーニングアナリティクス導入のメリット
ラーニングアナリティクスを導入すると、学習者本人だけでなく、指導する側や研修設計を行う担当者にも大きなメリットがあります。代表的な3つの効果を紹介します。
学習効率と理解度が向上する
蓄積された学習ログから傾向やパターンを分析すれば、学習者ごとの苦手分野や必要な学習内容を導き出せます。教材の閲覧時間やドリルの正誤結果、つまずいたページといった細かなデータをもとに、無駄のない学習の道筋を示せる点が特徴です。
広島市立大学の活用事例では、電子教科書で前のページに戻って知識を確認する学生ほど成績が良いなど、講義外の予習復習を含めた学修行動の特徴が明らかになりました。こうした知見は、指導のタイミングや教材設計の改善に直結します。
指導の質を客観的に把握できる
学習者の解答データや行動ログを可視化することで、指導者は勘や経験だけに頼らず、客観的なデータに基づいてフォローが必要な学習者を特定できます。指導内容や研修プログラムの効果測定にも活用でき、改善のサイクルを回しやすくなります。
| 観点 | 従来の指導 | ラーニングアナリティクス導入後 |
|---|---|---|
| 判断根拠 | 指導者の経験や勘 | 学習ログに基づくデータ |
| フォロー対象の特定 | 手探りで対応 | データから客観的に特定 |
| 改善サイクル | 属人的で不定期 | 継続的にデータで検証 |
教育DXの推進につながる
GIGAスクール構想によって児童生徒1人1台の端末整備が進み、これまで紙ベースでは把握できなかった学習活動がスタディログとして取得できるようになりました。ラーニングアナリティクスは、この学習ログを可視化・分析し、学習と授業の両方を改善する手段として教育DXの中核を担っています。
企業研修においても、受講者のプロフィールや学習傾向を分析し、個々に適した指導方法やカリキュラムを提案する取り組みが広がっています。データに基づく意思決定を教育現場に根づかせる点で、教育DX全体の推進力になっています。
ラーニングアナリティクスの活用事例とツール
ラーニングアナリティクスは、全体のEdTech市場の成長にも支えられ、大学だけでなく企業でも導入が進んでいます。代表的な事例と、活用されているツールを紹介します。
九州大学の取り組み
九州大学は2021年にラーニングアナリティクスセンターを設置し、教育データの一元管理と分析研究を進めてきました。同センターは設置期間の満了に伴い2026年3月に活動を終了し、これまでの取り組みはデータ駆動イノベーション推進本部のラーニングアナリティクス部門に引き継がれています。
九州大学が培った知見は、他大学への展開にも生かされています。広島市立大学ではNTT西日本と共同で、九州大学の研究成果やノウハウをもとにしたラーニングアナリティクスのトライアルを実施しました。教育・情報科学・芸術の3学部の講義で導入が進み、電子教科書での学習行動と成績の関係性を分析するなど、具体的な教育改善につなげています。
企業研修での活用
企業研修においても、受講者の学習傾向や進捗をデータで把握し、指導方法やカリキュラムの改善に生かす動きが広がっています。東京工業大学とパナソニック インフォメーションシステムズが協力した事例では、LMSに可視化ツールを組み合わせ、学生の動画視聴状況をグラフ化して学習状況の把握に役立てました。
こうした知見は企業研修にも応用でき、階層や部門を問わず受講者ごとの理解度や弱点を把握し、必要な教材やフォローを的確に提供する体制づくりに活用されています。
代表的なツール
ラーニングアナリティクスの実践には、データを可視化・分析するためのツールが欠かせません。代表的なツールの特徴を整理します。
| ツール名 | 主な特徴 |
|---|---|
| Re:dash | LMSからのデータを視覚化し、授業ごとの進捗や理解度を把握しやすくする |
| Tableau | データの相関関係や学習パターンを視覚化できる分析ツール |
| BookRoll | 九州大学が開発したデジタル教科書配信システムで、閲覧ログを取得できる |
自社や自校がすでに使っているLMSとの連携のしやすさや、可視化したいデータの種類に応じて、適したツールを選ぶことが重要です。
まとめ:ラーニングアナリティクスは学びをデータで見える化する仕組み
本記事では、ラーニングアナリティクスの意味やLMS・アダプティブラーニングとの違い、導入するメリット、大学や企業での活用事例とツールまでを解説しました。
本記事のポイント
- ラーニングアナリティクスは学習ログを分析し教育改善に役立てる取り組み
- LMSはデータの蓄積基盤、アダプティブラーニングは分析結果の活用手段という役割の違いがある
- 学習効率の向上や指導の客観化を通じ教育DXの推進につながる
ラーニングアナリティクスの全体像を理解できれば、勘や経験に頼っていた指導や研修を、データに基づいた客観的な取り組みへと変えられます。
九州大学や広島市立大学の事例、Re:dashやTableauといったツールの特徴を踏まえ、自社や自校に合ったラーニングアナリティクスの導入を検討してみてください。
ラーニングアナリティクスに関するよくある質問
参考文献
執筆者
編集部
クロステック(産業×テクノロジー)の専門メディア「Tech With」の公式編集部です。多角的なリサーチと、各バーティカル(建設・農業・金融等)の現場キーマンへの丁寧な取材を通じ、DX推進や先端技術導入の全体像を分かりやすく体系化して皆さまにお届けします。
監修者
リサーチチーム
クロステック(産業×テクノロジー)の市場動向や先端事例、補助金情報などを多角的に調査・分析する専門チーム。AIを活用した網羅的リサーチと、現場取材に基づく一次データを組み合わせ、ビジネスの意思決定を支援する独自レポートや体系的なガイドラインの作成・監修を行っています。
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