リスキリングのeラーニング活用法とは?進め方や助成金を解説
この記事のポイント
リスキリングにeラーニングを取り入れる企業では、スキル可視化から育成計画、実務でのアウトプットまで段階的に進めることが定着の鍵となり、人材開発支援助成金の活用でコスト負担も抑えられます。
「リスキリングにeラーニングを導入したいが、何から始めればよいのか、学んだ内容が実務に活かされるのか分からない」
こうした疑問に答えます。
本記事の内容
- リスキリングとeラーニングの関係、リカレント教育との違い
- 導入するメリットと陥りやすい失敗
- 進め方の5ステップと活用できる助成金
リスキリングにeラーニングを取り入れれば、時間や場所の制約を受けず、社員一人ひとりに合わせたスキル刷新を進められます。
段階を踏んで運用を設計すれば、学習が形骸化せず実務の成果につながるリスキリングを実現できます。最後まで読み進めてください。
リスキリングとeラーニングの基礎知識
リスキリングとeラーニングを組み合わせる企業が増えています。まずは両者の関係性と、注目される背景を押さえておきましょう。
リスキリングの意味とeラーニングの関係
リスキリングとは、新しい職業に就くため、または今の職業で必要なスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得することです。経済産業省もこの定義を用いており、人材育成dx推進を目的に企業が主体となって取り組む学び直しを指します。
eラーニングは、パソコンやスマートフォンを使ってインターネット経由で学習する方法です。時間や場所を選ばずに学べる特性から、業務と並行してスキルを習得するリスキリングと相性がよく、多くの企業が導入する学習手段になっています。
リカレント教育との違い
リスキリングとリカレント教育は、どちらも学び直しを指す言葉であるものの、主体や進め方が異なります。リスキリングは企業が主導し、従業員が働きながら新しいスキルを習得する取り組みです。
一方でリカレント教育は、個人が主体となり、必要に応じて就業を離れて学び直す教育を指します。学習内容もリスキリングはDX推進に役立つデジタル分野に特化しやすいのに対し、リカレント教育は個人の関心やキャリアに応じて幅広く選ばれる違いがあります。
| 項目 | リスキリング | リカレント教育 |
|---|---|---|
| 主体 | 企業 | 個人 |
| 学び方 | 就業を継続しながら学ぶ | 就業を離れて学ぶことも多い |
| 学習内容 | DX関連など特定領域に特化しやすい | 個人の関心に応じて幅広い |
eラーニングがリスキリングに向いている理由
eラーニングがリスキリングの手段として選ばれる理由は、幅広い社員に対して個々の必要なスキルに合わせた学習コンテンツを提供できる点にあります。習熟度に応じた反復視聴や、必要な箇所だけの視聴もでき、柔軟な学び方が可能です。
学習管理システムを使えば、社員一人ひとりの進捗や理解度をデータで把握できます。対面研修に比べて費用や運用の負担を抑えやすいことも、企業に選ばれる理由のひとつです。
企業でリスキリングが求められる背景
企業でリスキリングが求められる背景には、DX推進を担う人材の不足があります。多くの企業がデジタル人材を十分に確保できず、業務のデジタル化が思うように進まない状況が続いています。
こうした状況を受け、政府はデジタル人材の育成目標として大規模な人数を掲げており、企業単独の採用活動だけでは必要な人材を確保しきれません。社内でリスキリングを計画的に進め、既存の従業員をデジタル人材へと育成する重要性が一段と高まっています。
リスキリングにeラーニングを取り入れるメリットと注意点
リスキリングにeラーニングを取り入れると多くのメリットが得られる一方、運用を誤ると成果につながらないこともあります。両面を理解したうえで導入を検討しましょう。
eラーニング活用で得られるメリット
eラーニングを使ったリスキリングの代表的なメリットは、社員が自分のペースで効率的に学べることです。時間や場所の制約が少なく、忙しい業務の合間でも学習を進めやすくなります。
企業側にとっては、eラーニングシステムを使って進捗を可視化できる点が大きな利点です。従業員のキャリア形成を支援する姿勢を示せるため、エンゲージメントや定着率の向上にもつながります。
陥りやすい失敗と課題
一方で、eラーニングによるリスキリングには陥りやすい失敗もあります。従業員の自主性に任せきりにしてしまい、管理者が動機付けを行わないまま放置するケースは代表的な例です。
学習の目的やメリットが伝わっていないと、従業員は前向きに取り組めません。日常業務が忙しく学習時間を確保できないことや、進捗のフィードバックがないまま学習が形骸化してしまうことも、よくある課題です。
- 従業員任せになり、動機付けが行われない
- 学習の目的やメリットが伝わっていない
- 業務が忙しく学習時間を確保できない
- 進捗のフィードバックがなく形骸化する
失敗を防ぐポイント
こうした失敗を防ぐには、業務時間内に学習時間を確保する制度を設けることが有効です。直属の上司が部下のリスキリングを支援する役割を担い、1on1で進捗を確認する仕組みも効果があります。
学習の目的を「どのようなスキルを、なぜ身につけるのか」まで具体的に伝えることも欠かせません。進捗を見える化し、定期的にフィードバックする体制を整えれば、学習の形骸化を防ぎやすくなります。
リスキリングをeラーニングで進める5つのステップ
リスキリングは、思いつきでeラーニングを導入するだけでは成果につながりにくいものです。現状把握から実践まで、段階を踏んで進めることが定着への近道になります。
①現状のスキルを可視化する
最初のステップは、従業員のスキルと素養をアンケートやテストで客観的に把握することです。部署別・個人別にスキルを棚卸しし、現状のレベルを見える化します。
あわせて、将来必要になるスキルと現状のギャップを洗い出します。ギャップを具体的に示すことで、次の育成計画の精度が高まります。
②育成計画と教材を設計する
現状が見えたら、スキルギャップを埋めるための育成計画を立てます。誰に、どのスキルを、どの順番で身につけさせるかをロードマップとして整理する段階です。
教材は、eラーニングのコンテンツを中心に、対面研修やOJTと組み合わせたカリキュラムとして設計します。学ぶべきスキルを3から5段階のレベルに落とし込んでおくと、育成の到達目標が明確になります。
③学習を実施し進捗を管理する
計画に沿って、マイクロラーニングなども取り入れながらeラーニングによる学習を実施します。学習管理システムを活用すれば、従業員一人ひとりの進捗や理解度をデータで把握できます。
進捗が可視化できると、学習が滞っている社員へ早めにフォローを入れられます。上長が進捗確認に関わる仕組みをつくることも、学習継続の後押しになります。
④実務でアウトプットする機会をつくる
知識をインプットしたら、実際の業務でアウトプットする機会をつくります。最初から大規模な業務に挑戦するのではなく、小規模なプロジェクトから始めるのが現実的です。
リスクの少ない業務プロセスで試行すれば、成果を数値で確認しやすくなります。小さな成功体験は、社員の学習意欲を高める効果もあります。
⑤成果を評価し定着させる
最後のステップは、学習データを可視化し、成果を人事評価や人材配置に反映させることです。実践を通じて得たノウハウを社内で共有し、他部署への横展開も進めます。
成果検証と改善を繰り返しながら取り組むことで、無理なくリスキリングを社内に定着させられます。評価に反映される仕組みがあることで、従業員の学習意欲も維持しやすくなります。
リスキリングのeラーニングにかかる費用と活用できる助成金
リスキリングにeラーニングを導入する際に気になるのが、費用と投資対効果です。コストの内訳と活用できる支援制度を押さえておくと、無理のない予算計画を立てやすくなります。
主なコストの内訳
リスキリングのeラーニングにかかる費用には、サービスの月額利用料や教材費、社内担当者の運用にかかる人件費が含まれます。クラウド型のeラーニングは初期費用が無料のサービスも多く、月額料金は1ユーザーあたり数百円から1,000円前後が中心です。
見積書に載りにくい担当者の人件費や運用の手間も、実質的なコストとして考慮する必要があります。表面的な利用料だけで判断すると、後から想定外の負担が発生することがあります。
活用できる助成金・補助金制度
リスキリングのeラーニング導入にかかるコストは、公的な助成金で抑えられます。代表的な制度が、厚生労働省の人材開発支援助成金にある事業展開等リスキリング支援コースで、中小企業は訓練費用の最大75%が助成されます。
eラーニングや通信制による訓練の場合、1人1訓練あたりの経費助成上限額は中小企業で15万円、大企業で10万円です。このほか、都道府県や市区町村が独自に実施する地域限定の支援制度もあるため、自社の規模や目的に合う制度を確認したうえで活用を検討します。
| 制度 | 所管 | 特徴 |
|---|---|---|
| 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース) | 厚生労働省 | 中小企業は訓練費用の最大75%を助成 |
| 経済産業省のリスキリング支援事業 | 経済産業省 | キャリア相談から受講、転職支援まで一貫支援 |
| 地域の独自補助金 | 都道府県・市区町村 | 対象や条件が地域ごとに異なる |
自社に合ったサービスの選び方
eラーニングサービスを選ぶ際は、学べる知識やスキルの内容が自社のリスキリング目標に合っているかを確認します。外部から購入するだけでなく、自社でのeラーニング作成に対応できるか、また管理職向けや新入社員向けなど、対象者に応じた教材が揃っているかも重要な確認ポイントです。
学習管理システムによる進捗の可視化機能や、対面研修・OJTと組み合わせやすい柔軟性も比較の軸になります。料金体系はサービスによって異なるため、自社の受講人数や学習時間の見込みに合わせて費用対効果を検討しましょう。
まとめ:リスキリングはeラーニングで着実に進められる
本記事では、リスキリングとeラーニングの関係やリカレント教育との違いから、導入のメリットと注意点、進め方の5ステップ、費用と活用できる助成金までを解説しました。
本記事のポイントをおさらいします。
本記事のポイント
- リスキリングは企業主導、eラーニングと相性のよい学び直しである
- 現状のスキル可視化から実務でのアウトプットまで段階的に進めることが定着の鍵
- 助成金や補助金を活用すればコスト負担を抑えながら取り組める
段階を踏んでeラーニングを活用すれば、研修を実施するだけで終わらせず、実務の成果につながるリスキリングを実現できます。
紹介したステップや制度を参考に、自社でのリスキリングの取り組みを検討してみてください。ご相談やお問い合わせもお気軽にお寄せください。
リスキリングのeラーニングに関するよくある質問
参考文献
執筆者
編集部
クロステック(産業×テクノロジー)の専門メディア「Tech With」の公式編集部です。多角的なリサーチと、各バーティカル(建設・農業・金融等)の現場キーマンへの丁寧な取材を通じ、DX推進や先端技術導入の全体像を分かりやすく体系化して皆さまにお届けします。
監修者
リサーチチーム
クロステック(産業×テクノロジー)の市場動向や先端事例、補助金情報などを多角的に調査・分析する専門チーム。AIを活用した網羅的リサーチと、現場取材に基づく一次データを組み合わせ、ビジネスの意思決定を支援する独自レポートや体系的なガイドラインの作成・監修を行っています。
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