学校ICT化とは?メリット・デメリットと進め方を徹底的に解説
この記事のポイント
学校ICT化は、GIGAスクール構想による1人1台端末とネットワーク整備を土台に、授業や校務を効率化する取り組みです。授業の質向上や教員負担の軽減がメリットで、費用やICTスキルの格差、セキュリティが課題となります。
「学校ICT化を進めたいけれど、メリットとデメリットの両方を知ったうえで、何から手をつければよいのか分からない」
こうした疑問に答えます。
本記事の内容
- 学校ICT化の意味とGIGAスクール構想との関係
- 学校ICT化のメリットと押さえておきたい課題
- 学校ICT化を無理なく進める4つのポイント
学校ICT化とは、パソコンやタブレットなどの情報通信技術を授業や校務に活用し、教育の質を高める取り組みです。GIGAスクール構想によって整備が進み、2026年は端末更新と活用定着が同時に求められる転換期を迎えています。
メリットと課題の両方を踏まえて計画的に進めれば、教員の負担を抑えながら学びの質を高められます。最後まで読み進め、自校や地域での学校ICT化の検討に役立ててください。
学校ICT化とは何かをわかりやすく解説
学校ICT化とは、パソコンやタブレット、インターネットなどの情報通信技術を活用して、授業や学習の質を高め、校務DXを通じて業務を効率化する取り組みです。1人1台端末の活用を土台に、情報モラル教育や生成AIの適切な利用、CBT(コンピュータを使ったテスト)への対応まで含めて考える必要があります。
ICTの意味と学校ICT化の定義
ICTとはInformation and Communication Technologyの略で、情報通信技術を意味します。学校ICT化は、このICTを電子黒板やデジタル教科書、学習支援アプリといった形で教育活動全体に取り入れることを指します。
似た言葉にITがありますが、ITが技術そのものを指すのに対し、ICTは通信を介した情報のやり取りに重きを置く点が異なります。学校現場では、教員から児童生徒への一方向の指導だけでなく、双方向のコミュニケーションを実現する技術として位置づけられています。
学校ICT化が求められる背景
学校ICT化が求められる背景には、学習指導要領の改訂があります。2017年に告示された学習指導要領ではICTの活用が明記され、情報活用能力を言語能力と同じく学習の基盤となる資質・能力として位置づけました。
社会全体のデジタル化も後押しする要因です。児童生徒が卒業後にデジタル社会で自立して行動する力を養うには、学校段階からICTに触れ、使いこなす経験を積むことが欠かせません。こうした背景から、国は全国一律でのICT環境整備を進めてきました。
GIGAスクール構想との関係
学校ICT化を語るうえで欠かせないのが、GIGAスクール構想です。GIGAスクール構想は、児童生徒1人1台の端末と高速大容量の通信ネットワークを整備し、個別最適な学びと協働的な学びを実現することを目的とした国の施策です。
2021年3月時点で公立小中学校の1人1台端末整備はほぼ達成されました。2026年は、2020年から2021年にかけて一斉導入された端末が更新時期を迎える節目の年で、GIGAスクール構想は端末を配って終わる段階から、活用を定着させる第2期へと移っています。
| 段階 | 時期 | 主な焦点 |
|---|---|---|
| 第1期 | 2020年から2024年ごろ | 端末とネットワークの整備 |
| 第2期(NEXT GIGA) | 2024年から2028年ごろ | 端末更新と活用の定着、校務DXとの連携 |
端末更新は複数年に分かれて進む見通しで、調達の集中による費用や供給の課題にも注意が必要です。国の補助基準額は端末1台あたり5.5万円程度とされており、自治体はこの水準を踏まえて予算計画を立てています。
学校ICT化のメリット
学校ICT化を進めると、授業の質向上や教員の負担軽減など、複数の面で効果が期待できます。ここでは代表的な4つのメリットを取り上げます。
授業の質と学習効果を高められる
学校ICT化の大きな利点は、デジタル教材や動画を使うことで、授業の理解しやすさが増す点です。図形の動きや実験の過程を映像で示せば、教科書だけでは伝わりにくい内容も直感的に理解できます。
電子黒板を使えば板書の時間を減らせるため、その分を児童生徒への個別指導や対話に充てられます。実際に、教員がPC内に授業データを保存し板書を不要にしたことで、指導に集中しやすくなった学校の例も報告されています。
教員の校務負担を軽減できる
学習管理システムを活用すると、テストの自動採点や進捗状況の可視化ができ、採点や集計にかかる時間を大幅に削減できます。浮いた時間を教材研究や児童生徒との対話に回せる点は、教員にとって大きなメリットです。
校務支援システムと組み合わせれば、学校のペーパーレス化が進み、出席管理や成績処理といった事務作業も効率化されます。負担軽減は働き方改革の観点からも重視されており、ICT化が進むほど効果を実感しやすくなります。
個別最適な学びを実現できる
児童生徒それぞれの理解度は異なるため、一斉授業だけでは学びに差が生まれやすくなります。デジタル教材を使えば、習熟度に応じて自分のペースで問題に取り組める環境をつくれます。
インターネットを使った情報収集も組み合わせれば、興味のあるテーマを自分で深掘りする学びも可能です。個別最適な学びと、グループで話し合う協働的な学びを一体的に充実させることが、学校ICT化の狙いの一つになっています。
家庭学習との連携を強化できる
端末を家庭に持ち帰る運用を進めれば、授業と家庭学習をつなげやすくなります。日常的な持ち帰りによって、家庭でも学校と同じ教材やアプリで復習や予習ができる環境が整います。
災害や感染症による休校時にも、家庭に端末があればオンライン朝の会や授業を続けられます。オンライン会議サービスと連携したツールも整備が進んでおり、学びを止めない体制づくりに役立っています。
| メリット | 主な効果 |
|---|---|
| 授業の質向上 | 映像や図で理解を助け、板書時間を短縮する |
| 校務負担の軽減 | 自動採点や進捗管理で事務作業を減らす |
| 個別最適な学び | 習熟度に合わせた学習ができる |
| 家庭学習との連携 | 休校時も含め学びを継続できる |
学校ICT化の課題とデメリット
学校ICT化にはメリットが多い一方、費用面や人的な面での課題も存在します。導入前に把握しておくべき代表的な3つの課題を解説します。
端末やネットワークの整備・維持にコストがかかる
ICT教育の課題としても挙げられるように、学校ICT化を進めるには、端末購入費だけでなく、無線LANや校内サーバー、セキュリティソフトなど裏側の仕組みにも費用がかかります。1人1台端末の整備には多額の予算が必要で、購入後もメンテナンスや更新の費用が継続的に発生します。
更新時期が自治体ごとに集中しやすく、端末価格の高騰や供給不足への懸念も指摘されています。国の補助金を活用しつつ、更新時期を見据えた計画的な予算確保が欠かせません。
教員のICTスキルに格差が生じる
ICT機器の操作に慣れている教員とそうでない教員の間には、スキルの差が生まれやすい傾向があります。使い慣れていない教員にとっては、ツールの使い方を覚えることや授業に取り入れることそのものが負担になりがちです。
この課題への対策としては、校内外での研修会や勉強会、専門業者による講習の実施が有効とされています。継続的な研修の場を設けることで、教員間のスキル差を少しずつ埋めていく取り組みが求められます。
セキュリティとデジタルデバイドへの対応が求められる
クラウドサービスを活用したICT教育は利便性が高い一方、情報漏えいや不正アクセスへの不安を抱く学校も少なくありません。国はクラウド活用を前提とした情報セキュリティガイドラインを示し、安全な運用を後押ししています。
児童生徒側の課題としては、SNSを通じたトラブルや個人情報の流出といったリスクへの対応も必要です。加えて、家庭のネットワーク環境や保護者のサポート体制の違いによって生じるデジタルデバイド、つまり情報格差への配慮も欠かせません。
| 課題 | 主な内容 | 対応の方向性 |
|---|---|---|
| 費用 | 端末購入や維持管理にかかるコスト | 補助金の活用と計画的な予算配分 |
| 教員スキル | 操作習熟度の個人差 | 定期的な研修と勉強会の実施 |
| セキュリティとデジタルデバイド | 情報漏えいのリスクと家庭環境の差 | ガイドライン整備と家庭への支援 |
学校ICT化を進める4つのポイント
学校ICT化を無理なく進めるには、順序立てた取り組みが欠かせません。ここでは実践的な4つのポイントを紹介します。
①:現状を把握し目標を設定する
まず取り組みたいのが、自校の端末やネットワークの整備状況、教員のICT活用度合いを把握することです。現状を正確に捉えないまま導入を進めると、必要な支援や予算を見誤る原因になります。
現状把握のうえで、児童生徒に育みたい情報活用能力や、削減したい校務の種類など、具体的な目標を定めます。目的があいまいなままでは、せっかく整備した機器も十分に活用されずに終わりやすくなります。
②:環境整備とサポート体制を構築する
目標が定まったら、端末やネットワークといったハード面の整備と並行して、サポート体制を整えます。文部科学省はICT支援員を4校に1人配置することを目標としており、機器のメンテナンスやトラブル対応を担う人材の確保が重要です。
教育委員会内にCIOと呼ばれる情報化の統括責任者を置き、学校からの相談に応じられる仕組みをつくる自治体も増えています。現場任せにせず、組織的にサポートする体制が、ICT化を止めずに続ける鍵になります。
③:教員研修を実施し活用を定着させる
環境が整っても、教員が使いこなせなければ効果は限定的です。定期的な校内研修や勉強会、専門業者による講習を通じて、教員のICT活用スキルを底上げする取り組みが求められます。
研修では操作方法だけでなく、なぜICT化に取り組むのかという目的の共有も重要です。授業ですぐに使える教材や動画を用意し、負担感を減らしながら日常的な活用につなげる工夫が定着を後押しします。
④:校務DXと連携させる
学校ICT化は授業面だけでなく、校務の効率化とあわせて進めると効果が高まります。校務DXは、出欠管理や成績処理、保護者連絡といった業務をデジタル化し、教員の負担を軽減する取り組みです。
国は次世代の校務DX環境への移行を進めており、複数年をかけてクラウドを前提とした仕組みへの転換を支援しています。授業のICT化と校務DXを一体で計画すれば、教員がより多くの時間を児童生徒への指導に充てられるようになります。
| ステップ | 主な取り組み | 担い手 |
|---|---|---|
| ①現状把握と目標設定 | 整備状況の確認、目標の明確化 | 学校、教育委員会 |
| ②環境整備とサポート体制 | 端末・ネットワーク整備、ICT支援員配置 | 教育委員会、自治体 |
| ③教員研修 | 校内研修、勉強会の実施 | 学校、教育委員会 |
| ④校務DXとの連携 | 校務システムの統合、業務効率化 | 学校、教育委員会 |
まとめ:学校ICT化は活用定着までの計画的な取り組みが鍵
本記事では、学校ICT化の意味やGIGAスクール構想との関係、メリット、課題とデメリット、進め方のポイントまでを解説しました。
本記事のポイントをおさらいします。
本記事のポイント
- 学校ICT化はGIGAスクール構想を土台に授業と校務を効率化する取り組み
- 授業の質向上や校務負担軽減など複数のメリットがある一方、費用やスキル格差の課題もある
- 現状把握から校務DXとの連携まで、順序立てて進めることが定着の鍵になる
本記事を読んだことで、学校ICT化の全体像とメリット・デメリット、進め方の道筋が把握できたはずです。
自校や地域に合った学校ICT化の計画づくりに向けて、まずはできるところから一歩ずつ進めてみてください。導入や活用にお悩みの際は、お気軽にお問い合わせや資料請求をご利用ください。
学校ICT化に関するよくある質問
参考文献
執筆者
編集部
クロステック(産業×テクノロジー)の専門メディア「Tech With」の公式編集部です。多角的なリサーチと、各バーティカル(建設・農業・金融等)の現場キーマンへの丁寧な取材を通じ、DX推進や先端技術導入の全体像を分かりやすく体系化して皆さまにお届けします。
監修者
リサーチチーム
クロステック(産業×テクノロジー)の市場動向や先端事例、補助金情報などを多角的に調査・分析する専門チーム。AIを活用した網羅的リサーチと、現場取材に基づく一次データを組み合わせ、ビジネスの意思決定を支援する独自レポートや体系的なガイドラインの作成・監修を行っています。
関連記事
教育RPAとは?学校・教育委員会の導入事例とメリットを解説
教育RPAとは、学校や教育委員会、大学の定型業務を自動化する仕組みです。導入メリットや活用事例、費用相場、セキュリティ、選び方を解説します。
リスキリングのeラーニング活用法とは?進め方や助成金を解説
リスキリングでeラーニングを活用する企業が増えています。導入のメリットや課題、進め方の5ステップ、活用できる助成金までわかりやすく解説します。
学校キャッシュレス化とは?給食費・学費の導入メリットと方法
学校キャッシュレス化とは、給食費や学費の集金を電子決済に切り替える取り組みです。導入メリットや決済手段の種類、導入の手順を詳しく解説します。
eラーニングシステムとは?種類・費用相場・選び方を徹底解説
eラーニングシステムとは、学習環境をオンラインで整える仕組みです。LMSとの違いや機能、種類、選び方、費用相場まで詳しくわかりやすく解説します。
校務DXとは?進め方やメリット・課題、教育DXとの違いを解説
校務dxとは、デジタル技術で校務を効率化し教職員の負担を軽くする取り組みです。教育dxとの違いやメリットと課題、進め方をわかりやすく解説します。
生成AI学校活用とは?メリット・デメリットと導入事例を解説
生成AI学校活用とは、授業や校務に生成AIを取り入れる教育現場の動きです。文科省ガイドラインや導入のメリット・デメリット、活用事例を解説します。