ピープルアナリティクスとは?活用分野と進め方や事例を解説
この記事のポイント
ピープルアナリティクスとは、従業員のデータを収集・分析し、採用や育成、配置、離職防止などの人事課題の解決や意思決定に活かす手法です。定義やタレントマネジメントとの違い、進め方、分析手法、企業事例までを解説します。
「ピープルアナリティクスとは何かを知りたい。人事にデータを活かしたいけれど、何から始めればいいのか分からない」
こうした疑問に答えます。
本記事の内容
- ピープルアナリティクスの定義と注目される背景
- 採用や育成、離職防止での活用分野とメリット
- 基本的な進め方と代表的な分析手法
ピープルアナリティクスとは、従業員のデータを分析して人事の意思決定に役立てる取り組みです。
経験や勘だけに頼らないデータ活用は、採用や定着といった悩みの解決につながります。基礎から進め方、企業事例までを順に解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
ピープルアナリティクスとは
ピープルアナリティクスとは、従業員に関するさまざまなデータを収集して分析し、採用や配置、育成、評価といった人事の意思決定に役立てる取り組みです。タレントマネジメントとは異なるアプローチで人事の判断をデータで裏づける手法として、人事DXの中心的なテーマになっています。ここでは定義や背景、似た概念との違いを整理します。
ピープルアナリティクスの定義
ピープルアナリティクスとは、社員の属性データや行動データを収集し、統計的な分析を通じて人と組織の課題解決につなげるアプローチです。勤怠や評価、スキル、パフォーマンス、満足度といった情報を可視化し、根拠にもとづいた人事施策を実現します。
分析の対象は、人事情報だけにとどまりません。オフィス設備の利用状況やデジタルデバイスの操作ログなど、従業員の行動を映す幅広いデータも含みます。こうした多面的な情報を組み合わせることで、これまで見えなかった組織の実態をつかめるようになります。
注目が集まる背景
ピープルアナリティクスへの関心が高まっている理由は、大きく3つあります。人的資本経営の重要度が増したこと、働き方が多様化したこと、AIとデータ活用技術が発展したことです。
人的資本経営とは何かという議論が進む時代では、人材を費用ではなく価値を生む資本として捉えます。投資家や求職者から選ばれる企業であるために、人的資本の可視化や人材データ活用にもとづく説明責任が求められるようになりました。テレワークやジョブ型雇用が広がり、経験や勘だけでは組織の状態を把握しづらくなったことも背景にあります。
タレントマネジメントとの違い
ピープルアナリティクスとタレントマネジメントは重なる部分が多いものの、目的と扱うデータの範囲が異なります。違いを整理すると次のとおりです。
| 観点 | ピープルアナリティクス | タレントマネジメント |
|---|---|---|
| 主な目的 | データ分析による課題発見と意思決定の高度化 | 人材情報の一元管理と最適な活用 |
| 扱うデータ | 人事データに加え行動データやオフィスデータ | 経歴やスキルなど人材そのものの情報が中心 |
| 位置づけ | 人事を科学する分析アプローチ | 人材を戦略的に運用する仕組み |
タレントマネジメントが人材の情報を管理して活かす仕組みであるのに対し、ピープルアナリティクスは幅広いデータを分析して答えを導く手法という位置づけになります。
従来の人事手法との違い
従来の人事は、経験や勘、度胸を意味するKKDにもとづく判断が中心でした。この方法は意思決定が速い一方で、根拠が示しにくく、従業員の納得感を得にくいという弱点があります。
ピープルアナリティクスは、この判断をデータで裏づけます。客観的な事実にもとづくため、施策の説得力が高まり、環境変化が激しく課題が複雑化する状況でも一定の精度を保ちやすくなります。
ピープルアナリティクスのメリットと活用分野
ピープルアナリティクスの効果は、人事のあらゆる場面にわたります。データで従業員の状態を捉えることで、採用から育成、定着、評価まで、施策の精度を高められるからです。ここでは代表的な活用分野ごとに、得られるメリットを解説します。
採用力の強化
ピープルアナリティクスは、採用活動の質を高めます。自社で高い成果を出している従業員の経歴やスキルの傾向を分析し、活躍する人材の特徴を採用基準に反映できるためです。
面接官の主観に頼りがちだった選考を、データで補強できます。入社後に定着し成果を出す確率の高い人材を見極めやすくなり、採用のミスマッチ低減につながります。
人材育成と配置の最適化
育成の面でも、ピープルアナリティクスは力を発揮します。スキル管理システムなどを活用して従業員のスキルや成長の過程を可視化することで、一人ひとりに合った育成プログラムを設計できるからです。
配置においても、個人の適性やチームの相性をデータで捉えられます。経験だけに頼らず、本人の強みが活きる部署への配置を検討でき、組織全体のパフォーマンス向上が期待できます。
離職防止と定着率の向上
離職防止は、ピープルアナリティクスが特に効果を発揮する分野です。勤怠データやエンゲージメントサーベイのスコアを時系列で分析することで、離職の予兆を早期につかめます。
過去の離職者データをロジスティック回帰分析や決定木分析で解析すると、離職リスクの高い従業員を事前に把握できます。勤務態度や業績、人間関係の変化といった兆候をデータで捉え、面談や配置転換などの対策を先回りで打てるようになります。
人事評価の公平性向上
評価の公平性を高める点も、大きなメリットです。人事評価システムなどを活用して定量的なデータを評価に取り入れることで、評価者ごとのばらつきや主観による偏りを抑えられます。
根拠が明確になれば、従業員の納得感も高まります。目標管理においてokrツールを比較して導入するなど、透明性のある評価制度は、組織への信頼やエンゲージメントの向上にもつながっていきます。
ピープルアナリティクスの進め方と分析手法
ピープルアナリティクスは、正しい手順で進めることが成果への近道です。データを集めるだけでは意味がなく、目的の設定から効果検証まで一連の流れで取り組む必要があるからです。ここでは基本的な進め方と、代表的な分析手法、担い手に求められるスキルを解説します。
目的の明確化と課題設定
最初のステップは、解くべき人事課題を明確にすることです。離職率を下げたいのか、採用の精度を上げたいのか、目的が定まらないまま分析を始めても有効な示唆は得られません。
課題を具体的な問いに落とし込み、検証すべき仮説を立てます。この土台がしっかりしているほど、後のデータ収集や分析の方向性がぶれずに済みます。
データの収集と整理
次に、課題の解決に必要なデータを集めます。ピープルアナリティクスで扱うデータは、主に次の4種類に分けられます。
- 人材データ 経歴やスキル、評価、勤怠などの基本情報
- デジタルデータ メールやチャットなどのコミュニケーション記録
- オフィスデータ 座席の利用状況や入退室の記録
- 行動データ センサーで捉えた動きや対話の量
集めたデータは、形式をそろえ、欠損や誤りを取り除く整理が欠かせません。データの品質が分析結果の信頼性を左右します。
主な分析手法
整理したデータには、目的に応じた分析手法を選びます。代表的な手法は次のとおりです。
| 分析手法 | 概要 | 主な用途 |
|---|---|---|
| クラスター分析 | 似たデータ同士をグループに分ける | 従業員のタイプ分類 |
| 回帰分析 | ある結果を要因から予測する | 離職や成果の要因分析 |
| 決定木分析 | 条件分岐で結果を予測する | 離職リスクの判定 |
| 機械学習 | 大量データから予測モデルを構築する | 高精度な予測と自動化 |
単純な集計から始め、課題の複雑さに応じて高度な手法へ広げていくと、無理なく取り組めます。
施策の実行と効果検証
分析で得た示唆は、人事施策として実行してはじめて価値を生みます。離職リスクの高い従業員への面談や適性に合わせた配置転換、あるいは福利厚生サービスを比較して充実させるなど、具体的な行動につなげます。
施策を打った後は、効果を検証します。想定した成果が出たかをデータで確認し、改善を重ねるサイクルを回すことで、取り組みの精度が高まっていきます。
必要なスキルと資格
ピープルアナリティクスの推進には、複数のスキルの掛け合わせが求められます。データを扱う技術と、人事や組織への理解の両方が必要だからです。
具体的には、統計の基礎知識やExcel、BIツール、PythonやRといった分析ツールの操作スキルが役立ちます。加えて、課題を設定し結果を正しく解釈するための人事の知見も欠かせません。関連する資格としては、ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会が運営する人事データ保護士や、統計検定などがスキルの証明に活用できます。
ピープルアナリティクスの企業事例と課題
ピープルアナリティクスは、国内外の先進企業ですでに成果を上げています。実際の活用例を知ることで、自社での導入イメージがつかみやすくなります。一方で、導入には乗り越えるべき課題もあります。ここでは代表的な事例と、注意すべきポイントを解説します。
国内企業の活用事例
国内では、日立製作所が先進的な取り組みで知られています。同社は2017年にPeople Analytics Labを設立し、ウェアラブルセンサーで従業員のコミュニケーションや幸福度を可視化する研究を進めてきました。
新卒採用の改革でも、社内で活躍するハイパフォーマーの特徴を分析し、人材ポートフォリオの作成に活用しています。データにもとづく採用や配置により、人材活用の質を高めている事例です。
海外企業の活用事例
海外では、Googleがピープルアナリティクスの先駆けとして有名です。2000年代から人事へのデータ活用に取り組み、この分野を世界に広めた企業といえます。
同社の代表的な成果が、生産性の高いチームの条件を探る調査です。心理的安全性が成果を左右するという発見は、多くの企業のマネジメントに影響を与えました。優れたマネージャーに共通する行動の特定など、具体的な施策にもつなげています。
導入で直面する課題
一方で、ピープルアナリティクスの導入にはいくつかの課題があります。主なものは次のとおりです。
- 個人情報やプライバシーの取り扱い
- データの品質や客観性の確保
- 分析を担う人材やスキルの不足
従業員のデータを扱う以上、プライバシーへの配慮は避けて通れません。利用目的や管理方法を明確にせず進めると、従業員の不信を招くおそれがあります。
課題を乗り越えるポイント
課題への対策として、まずデータの取り扱いルールを整備します。利用目的やセキュリティ、責任の所在を明らかにし、従業員の合意を得たうえで進めることが信頼の前提になります。
分析人材の確保も重要です。社内に適任者がいない場合は、データサイエンティストの採用や外部の専門家との連携も選択肢になります。小さな範囲から始めて成功体験を積み、少しずつ対象を広げていく進め方が現実的です。
まとめ:ピープルアナリティクスとは人事データで意思決定を高度化する手法
ピープルアナリティクスとは、従業員のデータを収集して分析し、採用や育成、配置、評価といった人事の意思決定を高度化する手法です。本記事では、定義や注目される背景、タレントマネジメントとの違いから、活用分野や進め方、企業事例までを解説してきました。
本記事のポイントをおさらいします。
本記事のポイント
- 経験や勘に頼らずデータで人事判断を裏づける手法
- 採用や離職防止など幅広い人事課題の解決に役立つ
- 目的設定から効果検証まで手順を踏んで進める
ピープルアナリティクスを理解することで、勘に頼っていた人事の判断をデータで裏づけられるようになります。採用のミスマッチや離職といった課題に、根拠を持って向き合えるはずです。
自社での導入や人事データの活用にお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。具体的な進め方をまとめた資料もご用意しています。
ピープルアナリティクスに関するよくある質問
参考文献
執筆者
編集部
クロステック(産業×テクノロジー)の専門メディア「Tech With」の公式編集部です。多角的なリサーチと、各バーティカル(建設・農業・金融等)の現場キーマンへの丁寧な取材を通じ、DX推進や先端技術導入の全体像を分かりやすく体系化して皆さまにお届けします。
監修者
リサーチチーム
クロステック(産業×テクノロジー)の市場動向や先端事例、補助金情報などを多角的に調査・分析する専門チーム。AIを活用した網羅的リサーチと、現場取材に基づく一次データを組み合わせ、ビジネスの意思決定を支援する独自レポートや体系的なガイドラインの作成・監修を行っています。
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