AIドリルとは?メリット・デメリットとおすすめサービスを解説
この記事のポイント
AIドリルはAIが解答データを分析し理解度に応じて問題を自動出題する教材で、個別最適化学習を実現します。すららやQubena、tomoLinksなどが代表例で、学校の教員負担軽減に加え企業の人材育成への応用も広がっています。
「AIドリルという言葉は耳にするものの、具体的に何ができる教材なのか、自社や学校でどう活用すればよいのか分からない」
こうした疑問に答えます。
本記事の内容
- AIドリルの定義と紙のドリルとの違い
- 導入のメリットとデメリット
- 代表的なサービスと学校・企業の活用事例
AIドリルとは、AIが学習者ごとの理解度を分析し、最適な問題を自動で出題するデジタル教材です。
本記事を読めば、AIドリルの仕組みから導入時の注意点、代表的なサービスまで一通り理解でき、自社や学校に合った活用イメージを描けるようになります。最後まで読み進めてみてください。
AIドリルとは何かをわかりやすく解説
AIドリルとは、エドテックの一つとして人工知能の技術を使って児童生徒や受講者一人ひとりの理解度を分析し、最適な問題を自動で出題するデジタル教材です。紙のドリルとは異なり、解答データをもとに出題内容がリアルタイムで変化する点が特徴です。
AIドリルの定義と特徴
AIドリルは、解答の正誤や解答時間などのデータをAIが分析し、個々の理解度に合わせて問題を選び出す仕組みを持つ教材です。正答率が低い分野では基礎問題を、正答率が高い分野では応用問題を出題するため、無駄のない学習が可能になります。
スタディログ(学習履歴)を蓄積できる点も大きな特徴です。間違えた問題や忘れやすいタイミングの問題を自動で再出題する仕組みを持つサービスも多く、知識の定着を後押しします。
紙のドリルとの違い
紙のドリルは、学年やクラス単位で同じ内容の問題を一律に解く形式が基本です。一方でAIドリルは、学習者ごとに出題内容が変わるため、得意分野と苦手分野で難易度に差をつけられます。
| 比較項目 | 紙のドリル | AIドリル |
|---|---|---|
| 出題内容 | 全員一律 | 理解度に応じて変化 |
| 採点 | 手作業が中心 | 自動採点 |
| 進捗管理 | 目視での確認 | データで可視化 |
| 復習の仕組み | 本人任せ | 忘却タイミングで自動再出題 |
AI採点による自動化で採点や集計の手間が減ることで、指導者は個々の学習者へのフォローに時間を割きやすくなります。
アダプティブラーニングとの関係
アダプティブラーニングとは、学習履歴データをもとに一人ひとりの習熟度に応じて演習内容を調整し、学びの質を高める手法です。AIドリルは、このアダプティブラーニングを具体的な教材の形で実現するツールという関係にあります。
つまりAIドリルは、アダプティブラーニングという学習方法を実践するための代表的な手段のひとつです。両者を混同せず、AIドリルは仕組み、アダプティブラーニングは考え方だと整理しておくと理解しやすくなります。
AIドリルが注目される背景
AIドリルが注目される背景には、教育現場を取り巻く複数の課題があります。端末環境の整備、教員不足、学習ニーズの多様化という3つの流れが重なり、導入が加速しています。
GIGAスクール構想による学習環境の変化
GIGAスクール構想では、児童生徒1人1台の端末整備が全国的に進みました。2026年度は端末更新が一巡し、整備そのものよりも「どう使いこなすか」という活用格差が課題の中心になっています。
あわせて、そもそも教育DXとは何かを見据えた次世代校務DXへの移行やMEXCBTを使った学力検査の拡大など、データを活用した教育のインフラ整備も進行中です。こうした環境変化が、AIドリルのようなデータ活用型教材を導入しやすい土壌を作っています。
教育現場の人手不足と業務負担
公立学校の教員不足は深刻さを増しており、2025年度の実態調査では全国で3,827人の教師が不足し、4年間で約2倍に増加しました。小学校教員の時間外労働は月あたり95時間を超える例もあり、過労死ラインを上回る水準です。
このような状況では、採点や進捗管理にかかる時間を削減できるAIドリルが、教員の負担軽減策として期待されています。
個別最適化学習へのニーズの高まり
文部科学省は「個別最適な学び」を新学習指導要領の重要な柱と位置づけています。一人ひとりの特性や学習進度に応じて指導方法や教材を柔軟に提供する考え方であり、教員が全員を手作業でカバーするには限界があります。
AIドリルは、この個別最適な学びをテクノロジーの力で支える手段として位置づけられており、学校だけでなく企業の人材育成の場でも同様の発想が広がりつつあります。
AIドリルを導入するメリット
AIドリルを導入するメリットは、学習効果と業務効率の両面に現れます。実際の導入事例をもとに、代表的な3つのメリットを紹介します。
理解度に応じた学習を実現できる
AIドリルは、正答率が低い分野では基礎問題を、正答率が高い分野では応用問題を出題します。埼玉県戸田市の事例では、学習が苦手な児童がスモールステップと即時フィードバックによって「やればできる」という自己効力感を高めたことが報告されています。
一律の内容を一斉に解かせる従来型の学習と比べ、一人ひとりに合った難易度で取り組めるため、無理なく知識を積み上げられる点が強みです。
学習データを蓄積し可視化できる
AIドリルは、解答パターンや所要時間などのデータを蓄積し、学習者ごとの理解度や進捗状況を可視化します。東京都渋谷区の事例では、ドリルの利用頻度と定期テストの成績に相関が確認され、特に語彙や計算のように積み上げが必要な分野で知識定着の効果が示されました。
指導者はクラス全体の傾向を把握しやすくなり、個別の声かけやフォローが必要な学習者を早期に見つけられます。
教員や指導者の負担を軽減できる
採点や成績集計が自動化されることで、教員や指導者の作業時間を減らせます。ある公立中学校では、朝学習や宿題にAIドリルを取り入れた結果、数学の平均点が向上し、特に下位層の底上げにつながった例も報告されています。
こうした業務負担の軽減効果は、学校現場だけでなく、企業の研修担当者が受講者の理解度を把握しながら教育プログラムを運営する場面でも同様に期待できます。
AIドリル導入のデメリットと注意点
AIドリルには多くのメリットがある一方、導入前に押さえておきたい注意点もあります。効果を最大限に引き出すためにも、代表的な3つのデメリットを理解しておきましょう。
考える力が育ちにくくなる懸念がある
AIが最適な問題を自動で選んでくれる分、学習者自身が苦手分野を分析し、克服の方法を考える機会が失われる可能性があります。効率よく答えにたどり着ける環境は便利な一方、試行錯誤を通じて思考力を鍛える場面を奪いかねません。
この懸念に対しては、AIドリルを問題演習の効率化に使いつつ、記述問題やグループでの対話といった思考力を育む活動と組み合わせる工夫が有効です。
導入や運用にコストがかかる
AIドリルのような教育系SaaSツールは、月額数千円から数万円程度の利用料が一般的な相場です。初期設定や教員研修、既存システムとの連携にも一定の工数がかかります。
中小規模の学校や企業では、費用対効果を見極めながら段階的に導入範囲を広げる進め方が現実的です。国や自治体のDX関連補助金が活用できる場合もあるため、事前の情報収集や全体のEdTech市場の動向の把握も欠かせません。
精度を高めるには学習履歴の蓄積が必要
AIドリルは、解答データが蓄積されるほど出題の精度が高まる仕組みです。そのため、導入直後は学習履歴が少なく、最適な問題選定の精度が十分でない場合があります。
短期間で効果を判断せず、一定期間データを蓄積したうえで活用状況を見直す姿勢が求められます。
代表的なAIドリルサービスと選び方
AIドリルには複数のサービスが存在し、それぞれ特徴が異なります。代表的な3つのサービスと、選定時に押さえたい比較ポイントを紹介します。
すらら
すららドリルは、アダプティブな出題機能に加え、自動作問・採点機能やアニメーションによる対話式レクチャー機能を備えた公立小中学校向けのICT教材です。AIがつまずきを診断し、出題の難易度を自動でコントロールする点が特徴です。
Qubena
Qubenaは、全国170以上の自治体、2,300校以上、約100万人が利用するAI型学習ドリルです。小学1年生から中学3年生までの算数・数学、英語、国語、理科、社会の5教科をカバーし、間違いの原因をAIが解析したうえで、一人ひとりに最適化された問題を出題します。
tomoLinks
tomoLinksは、コニカミノルタが2019年から開発を続けるクラウド型学習支援サービスです。不登校や外国籍の児童など、学び方や理解のペースが異なる多様な学習者への対応を重視しており、教員不足や多忙な職場環境といった教育現場の課題解決も目的にしています。AIアシスト機能を備えたドリルには、約4万問の標準問題が搭載されています。
選定時に比較したいポイント
サービスを選ぶ際は、対象教科や学年の範囲が自社や学校のニーズに合っているか、既存の学習eポータルや校務システムと連携できるかを確認することが重要です。
| 比較の観点 | 確認するポイント |
|---|---|
| 対象範囲 | 教科・学年・レベルが目的に合っているか |
| データ連携 | 既存システムとの連携可否 |
| サポート体制 | 導入時の研修や運用支援の有無 |
| 費用 | 初期費用と月額費用のバランス |
企業で活用する場合は、自社オリジナル教材の登録可否や、部門別・職種別の理解度を可視化できるかといった観点も比較材料になります。
学校や企業でのAIドリル活用事例
AIドリルは学校教育だけでなく、企業の人材育成にも活用の幅を広げています。具体的な事例から、活用のイメージをつかんでいきましょう。
公立学校での導入事例
北海道江別市は、市内の全公立小中学校にAIドリルを導入しました。小学生は国語・算数・理科・社会・外国語の5教科、中学生は国語・数学・理科・社会・英語など9教科を対象とし、児童生徒一人ひとりに合った学びの実現を目指しています。
東京都足立区でも、区立の全小中学校にAI型ドリル教材を導入済みです。児童生徒の理解度分析だけでなく、教員の書類作成業務の効率化にもつなげ、負担軽減を図っている点が特徴です。
企業研修や人材育成への応用
企業の人材育成分野でも、アダプティブラーニングの考え方を取り入れる動きが広がっています。学習者ごとの進捗ログを分析し、習熟度に応じた研修コンテンツを提供する仕組みは、学校向けのAIドリルと発想が共通しています。
経済産業省の調査ではAI人材が数万人規模で不足すると予測されており、企業には社員のAIリテラシー向上やAI教育の推進が急務です。研修担当者が受講者ごとの理解度を可視化しながら、効率的にスキルアップを図る手段として、AIドリルの発想を応用した研修プログラムの活用が今後広がっていくと考えられます。
まとめ:AIドリルは学びを個別最適化する仕組み
本記事では、AIドリルの定義や紙のドリルとの違い、注目される背景、導入のメリットとデメリット、代表的なサービス、学校や企業での活用事例までを解説しました。
本記事のポイント
- AIドリルは理解度に応じて出題を変える個別最適化の教材
- 考える力への影響やコストなど導入前に押さえるべき注意点がある
- 学校だけでなく企業の人材育成にも応用が広がっている
AIドリルの仕組みとメリット・デメリットを理解できれば、自社や学校に合った教材選びや活用方針を判断しやすくなります。
代表的なサービスや事例を参考に、まずは自社の課題に合ったAIドリルの活用方法を検討してみてください。
AIドリルに関するよくある質問
参考文献
執筆者
編集部
クロステック(産業×テクノロジー)の専門メディア「Tech With」の公式編集部です。多角的なリサーチと、各バーティカル(建設・農業・金融等)の現場キーマンへの丁寧な取材を通じ、DX推進や先端技術導入の全体像を分かりやすく体系化して皆さまにお届けします。
監修者
リサーチチーム
クロステック(産業×テクノロジー)の市場動向や先端事例、補助金情報などを多角的に調査・分析する専門チーム。AIを活用した網羅的リサーチと、現場取材に基づく一次データを組み合わせ、ビジネスの意思決定を支援する独自レポートや体系的なガイドラインの作成・監修を行っています。
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