年末調整の電子化システムの選び方とメリット・導入手順を解説
この記事のポイント
年末調整の電子化システムは、従業員がオンラインで控除申告書を入力し、企業がデータを取り込んで年税額を計算する仕組みです。令和3年分以降は税務署への承認申請が不要で、国税庁の無料の年調ソフトと配布から提出まで対応する民間システムを、企業規模に応じて選べます。
「年末調整を電子化するシステムを導入したいけれど、何ができて何が義務なのか、税務署への申請は必要なのか、従業員が使いこなせるのか判断できず迷っている」
こうした疑問に答えます。
本記事の内容
- 年末調整の電子化でできることと電子化できる書類
- 電子化のメリットとシステムの種類・選び方
- 導入の手順と義務化に関する正しい知識
年末調整の電子化システムを導入すれば、従業員の手書きや担当者の検算をなくし、手続き全体の負担を大きく減らせます。
システムの種類や選び方、導入の手順を押さえれば、自社に合った電子化を進められます。最後まで読み進め、年末調整の効率化に役立ててください。
年末調整の電子化とは
年末調整の電子化とは、これまで紙で行っていた年末調整の手続きを、システムを使ってデータでやり取りする仕組みです。工数管理ツールなどで測っても明らかなように、従業員が控除申告書をオンラインで入力し、企業がそのデータを給与システムに取り込んで年税額を計算することで作業時間を大幅に短縮できます。
年末調整の電子化で変わること
年末調整の電子化では、従業員と担当者の作業の進め方が大きく変わります。紙の配布や手書き、手計算といった作業が、データ入力と自動計算に置き換わるからです。
従業員は保険料控除などの証明書を電子データで受け取り、国税庁が提供する年調ソフトや民間システムに入力します。控除額は自動で計算されるため、複雑な計算を自分で行う必要がなくなります。企業側は提出されたデータを取り込むだけで済み、人事DXとは何かを実感できるほど転記や検算の手間を省けます。
電子化できる書類
年末調整で電子化できる書類は、従業員が提出する各種の申告書と控除証明書です。対象を把握しておくと、電子化の範囲を検討しやすくなります。
電子データで扱える主な書類は次のとおりです。
- 扶養控除等申告書
- 保険料控除申告書
- 基礎控除申告書や配偶者控除等申告書
- 住宅ローン控除の申告書
- 生命保険料や地震保険料などの控除証明書
これらを電子データで受け渡しすることで、紙の書類のやり取りを減らせます。
電子化はいつから可能になったか
年末調整の電子化は、2020年10月以降の手続きから本格的に可能になりました。従業員が控除証明書などを電子データで提出できるようになったことが出発点です。
以前は電子化にあたって所轄の税務署長への承認申請が必要でしたが、令和3年分以降はこの申請が不要になりました。企業は事前の手続きなく電子化を始められるため、導入のハードルは下がっています。
年末調整を電子化するメリット
年末調整を電子化するメリットは、長年の人事課題でもあった従業員と担当者の双方の負担軽減です。手作業を自動化することで、時間の短縮とミスの防止を同時に実現できます。
従業員の手書きや計算の負担を減らせる
電子化により、従業員の手書きや計算の負担を減らせます。システムが画面の案内に沿って入力を進め、控除額を自動で計算してくれるからです。
従業員は複雑な控除額を自分で計算する必要がなくなり、記入の迷いも少なくなります。控除証明書を電子データで取得すれば、書類の紛失を心配することもありません。
担当者の入力と検算の工数を削減できる
年末調整の電子化は、担当者の入力と検算の工数を大きく削減します。従業員が提出したデータをシステムに取り込むだけで、転記の作業が不要になるためです。
紙の申告書では、担当者が内容を確認して手作業で入力し、計算結果を検算する必要がありました。電子化ではこれらの工程が自動化され、繁忙期の負担が軽くなります。
記入ミスや計算ミスを防げる
電子化は、記入ミスや計算ミスの防止にもつながります。システムが入力内容をチェックし、控除額を自動で計算するため、人の手による誤りが起こりにくいからです。
紙の手続きでは、記入漏れや計算間違いが後から見つかり、差し戻しややり直しが発生していました。入力段階で不備を防げる電子化は、手戻りの削減に役立ちます。
ペーパーレスで保管の負担をなくせる
年末調整の電子化は、書類の保管の負担をなくします。提出された申告書がデータとして蓄積されるため、紙のファイルを保管するスペースが不要になるからです。
必要なときにデータを検索して取り出せるため、書類を探す手間もかかりません。ペーパーレス化によって、印刷や封入といった付随作業も減らせます。
年末調整の電子化システムの種類と選び方
年末調整の電子化システムは、無料で使えるものから有料の高機能なものまで幅があります。それぞれの特徴を理解し、自社の規模や運用に合ったシステムを選ぶことが大切です。
国税庁の年調ソフトと民間システムの違い
年末調整の電子化には、国税庁の年調ソフトと民間のシステムという2つの選択肢があります。両者は費用と対応範囲が大きく異なります。
| 項目 | 国税庁の年調ソフト | 民間の電子化システム |
|---|---|---|
| 費用 | 無料 | 有料が中心 |
| 対応範囲 | 控除申告書の作成が中心 | 配布から回収、計算、提出まで |
| サポート | なし | 提供されることが多い |
| 給与システム連携 | 手動での取り込みが必要 | 自動連携できる製品が多い |
国税庁の年調ソフトは無料で利用できますが、専用のサポートや給与計算との自動連携はありません。手続き全体を効率化したい場合は、民間システムが選択肢になります。
給与システム連携型と専用クラウド型
民間のシステムは、給与システム連携型と専用クラウド型に分けられます。すでに使っている給与ソフトとの関係で、適したタイプが変わります。
給与システム連携型は、給与計算ソフトに年末調整の機能が組み込まれているタイプです。勤怠管理システム比較等を経て導入済みの給与データと連携しやすく、日常の給与計算から年末調整まで一貫して処理できます。専用クラウド型は年末調整に特化しており、書類の配布から回収、年税額の計算までをオンラインで完結できます。
システムを選ぶときのポイント
システムを選ぶときは、複数の観点から自社に合うかを見極めます。機能の充実度だけでなく、従業員の使いやすさや既存システムとの相性が重要になるからです。
確認しておきたい主なポイントは次のとおりです。
- 従業員がスマホやパソコンで簡単に入力できるか
- 既存の給与システムと連携できるか(給与計算ソフト比較の際にも重視されるポイントです)
- 法改正への対応やセキュリティ対策が十分か
- 導入時や運用中のサポートを受けられるか
これらを比較し、自社の規模と従業員のITの習熟度に合ったシステムを選ぶと、導入後の定着がスムーズになります。
年末調整を電子化する手順
年末調整の電子化は、事前の準備を計画的に進めることが成功の鍵です。方法の決定から年税額の計算まで、4つのステップで整理します。
①:電子化の方法とシステムを決める
はじめに、電子化の方法と使用するシステムを決めます。無料の年調ソフトで進めるのか、民間システムを導入するのかによって、準備の内容が変わるからです。
自社の従業員数や既存の給与システムを踏まえて、適したシステムを選びます。雇用契約書の電子化などと同様に、年末調整の繁忙期に間に合うよう、遅くとも9月ごろまでに契約と初期設定を済ませておくと安心です。
②:社内ルールを整備する
システムを決めたら、電子化に合わせて社内ルールを整備します。従業員がいつまでに、どのように申告データを提出するのかを明確にする必要があるためです。
提出の期限や方法、控除証明書の電子データの取得方法などをルールとしてまとめます。担当者側の確認フローも整えておくと、回収から計算までの流れがスムーズになります。
③:従業員へ周知して準備を促す
次に、従業員へ電子化を周知し、必要な準備を促します。従業員側でも控除証明書の電子データの取得など、事前の準備が必要になるためです。
保険会社のサイトやマイナポータル連携を使った控除証明書の取得方法を案内します。操作に不慣れな従業員に向けて、手順書や問い合わせ窓口を用意しておくと、当日の混乱を防げます。従業員への案内は10月ごろまでに整えると余裕を持って進められます。
④:申告データを回収して年税額を計算する
最後に、従業員から申告データを回収し、年税額を計算します。提出されたデータをシステムに取り込み、年末調整の計算を行う工程です。
システム上でデータが自動計算されるため、担当者は内容を確認して処理を進めます。計算結果に基づいて過不足を精算し、必要な書類を保管して年末調整の手続きが完了します。
まとめ:年末調整の電子化システムで手続きを効率化する
年末調整の電子化システムは、従業員の手書きや担当者の検算をなくし、手続き全体の負担を大きく減らします。本記事では、電子化の概要と対象書類、メリット、システムの種類と選び方、導入手順を解説しました。
本記事のポイントをおさらいします。
本記事のポイント
- 年末調整の電子化は令和3年分以降、税務署への申請なく始められる
- 従業員と担当者の双方の工数とミスを減らせる
- 国税庁の年調ソフトと民間システムを規模に応じて選ぶ
自社の従業員数や既存システムを踏まえてシステムを選び、社内ルールの整備と従業員への周知を計画的に進めれば、年末調整の電子化をスムーズに導入できます。繁忙期の負担を減らし、正確で効率的な手続きにつなげてください。
年末調整の電子化をはじめとするバックオフィス業務のデジタル化について、さらに詳しく知りたい方は、お問い合わせや資料請求からお気軽にご相談ください。
年末調整の電子化に関するよくある質問
参考文献
執筆者
編集部
クロステック(産業×テクノロジー)の専門メディア「Tech With」の公式編集部です。多角的なリサーチと、各バーティカル(建設・農業・金融等)の現場キーマンへの丁寧な取材を通じ、DX推進や先端技術導入の全体像を分かりやすく体系化して皆さまにお届けします。
監修者
リサーチチーム
クロステック(産業×テクノロジー)の市場動向や先端事例、補助金情報などを多角的に調査・分析する専門チーム。AIを活用した網羅的リサーチと、現場取材に基づく一次データを組み合わせ、ビジネスの意思決定を支援する独自レポートや体系的なガイドラインの作成・監修を行っています。
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